現役引退により形式消滅となるJR第一世代の311系(写真は サハ311-4)

JR東海の311系のなかで最後まで残っていたG1・G11編成が、2025(令和7)年6月末に定期運用から離脱しました。
その後、同編成は、7/12(土)に廃車回送を兼ねた団体臨時列車(廃車回送ツアー)として名古屋~大垣~西浜松間で運転されましたが、この最終運行をもってその歴史に幕を下ろしました。
311系を構成している4形式のうちクモハ311形、モハ310形、クハ310形は既にこちらで紹介済みですので、今回は残りの1形式、サハ311形をアップしたいと思います。
311系には 1989(平成元)年製の1次車(G1〜G5編成)と1990・1991(平成2・3)年製の2次車(G6〜G15編成)が存在しますが、今回は1次車(カキG4編成)の サハ311-4(海カキ)です。
1次車のため、側窓上部のカラー帯部分の前後2ヶ所に車外スピーカーが取り付けられています。
サハ311-4(海カキ) 2023年3月17日 熱田駅
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311系は、国鉄時代に登場した211系をベースに、アコモデーションなどを大幅に改良した3扉車タイプの近郊形電車です。
東海道本線名古屋地区の「新快速」での運用を想定していたため、扉間をすべて転換クロスシートまたは固定クロスシートにグレードアップし、客室の前後(運転室後部と妻仕切部)にLED式の情報装置を設置するなど、国鉄時代には考えられないほど豪華な近郊形車両となりました。
311系 編成表
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311系は名古屋地区の通勤輸送を担う形式である一方、かつては名古屋~塩尻間の「ナイスホリデー木曽路」や大垣~飯田間を結んだ「ナイスホリデー天竜・奥三河」、JR西日本管内の長浜まで足を延ばした「ナイスホリデー近江路」など、指定席付きの臨時快速列車でも活躍しました。
313系が幅を利かせるまではきれいに形式写真を撮るのが難しかった311系ですが、313系の増備で117系が淘汰されると117系に代わって311系が熱田駅でお昼寝するようになり、曜日指定さえ間違わなければ311系はいつでも撮れる形式になりました。
熱田駅でのお昼寝運用も2024(令和6)年から315系に取って代わり、311系の運用本数はダイヤ改正のたびに運用本数が減っていきました。
311系が登場した1989(平成元)年ごろはJR各社が“脱国鉄”をこぞってアピールしていた時代で、JR北海道の721系、JR西日本の221系、JR九州の811系など、各社がそれぞれの地域特性を反映したJR第一世代の近郊形電車が送り出されました。
しかし、その後の車両運用方針はJR各社によって大きく異なり、221系や811系が機器更新・車内改装など体質改善工事を受けて延命されているのに対し、311系は更新を施されることなく、登場から36年を経てすべての車両が引退・廃車されることとなりました。
その潔い終焉は、ある意味でJR東海らしい合理性の表れともいえるかもしれません。
ただ、残念なのは転換クロスシートなどの装備が災いして、211系5000・6000番代のように私鉄会社への譲渡の話が聞こえてきません…
120km/h運転で酷使されたというのもあるのでしょうね。